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横浜地方裁判所 昭和59年(行ウ)23号 判決 1989年9月27日

横浜市港北区下田町五丁目二九番二三号

原告

株式会社 下田工務店

右代表者代表取締役

鈴木操

右訴訟代理人弁護士

内野経一郎

仁平志奈子

武藤功

右内野経一郎訴訟復代理人弁護士

井上玲子

横浜市神奈川区栄町八番地六

被告

神奈川税務署長

渡邉眞一

右訴訟代理人弁護士

青木康

右指定代理人

石黒邦夫

鈴木實

宮路正子

原敏之

塚本博之

渋谷三男

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告の昭和五四年三月一日から昭和五五年二月二九日までの事業年度分の法人税について昭和五七年四月三〇日付けでした更正処分及び重加算税の賦課決定処分(但し、いずれも審査裁決による減額後のもの)を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、建築工事業等を営む青色申告書であるが、原告の昭和五四年三月一日から昭和五五年二月二九日までの事業年度分(以下「本件事業年度」という。)の確定申告、これに対する被告の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び重加算税の賦課決定(以下、「本件賦課決定」といい、本件更正処分と併せて「本件処分」という。)、原告の不服審査の経緯は、別表「本件課税処分の経緯」記載のとおりである。

2  本件処分は、次のとおり、原告の所得を過大に認定してなされたものであるから違法である。

(一) 原告は、原告の取引先である三晃住建株式会社(以下「三晃住建」という。)が昭和五四年八月当時多額の負債を抱えて極度の経営難に陥っていたため多額の融資を行い、かつ、大量の建築工事を発注し、さらに、原告の代表取締役が同社から経営委託を受けて再建の支援をしていたところ、同社の経営建て直しの一環として、同社と協力して不動産取引を行い、同社が不動産の譲渡益を取得できるようにしていた。

そこで、原告は、三晃住建が東京都世田谷区太子堂二丁目三四九番の三、同番の九及び同番の一四の土地(地積合計一八三・六四平方メートル)並びに東京都世田谷区太子堂二丁目三四九番の二所在の建物(床面積六九・一二平方メートル、以下これらの不動産をあわせて「本件第一物件」という。)を購入して転売利益を取得できるように協力していたが、本件第一物件の売買契約日が急に決まり三晃住建の代表取締役と連絡がつかず、そのうえ、売主側の仲介業者古河産業株式会社(以下「古河産業」という。)も買主を原告として社内稟議を済ませ買主を三晃住建と変更する間がなかったことから、昭和五四年八月二二日、原告名義で本件第一物件を買い受ける契約をした。

また、三晃住建は、同年九月三日、本件第一物件を株式会社中野商事(以下「中野商事」という。)に転売したが、同物件の購入契約において買主を原告名義としていたため、転売契約においても原告を売主としないと所有権移転の経緯が一貫しないので、原告名義で中野商事の売却する旨の売買契約を締結したが、後日購入契約の名義を三晃住建に変更した際に転売契約の売主も同社に変更する予定で、残代金の精算の際、購入契約書の買主欄に三晃住建の商号を記載した紙片を貼付し、転売契約書についても売主を三晃住建とした契約書に差し換えた。

なお、三晃住建が資金を有していなかったため、原告が三晃住建に本件第一物件の購入資金を貸し付け、中野商事への転売代金を右貸付金の返済に充当し、譲渡益七六三万二五〇〇円(売買差額金一二一三万二五〇〇円から仲介手数料四五〇万円を控除した金額)を原告に対する三晃住建の既存の借受金債務の弁済に当てて精算した。

(1) 主位的主張

原告は、三晃住建の代理人として、昭和五四年八月二二日、本件第一物件を堀田正義、堀田義之、堀田知明、小野富夫、堀田裕子、堀田温子(以下「堀田正義外五名」という。)の共有者から五一八〇万三五〇〇円で購入し、同年九月三日、中野商事に六三九三万六〇〇〇円で転売した。

したがって、本件第一物件の取引の効果は三晃住建に及んでいるのであるから、譲渡益は三晃住建に帰属する。

(2) 予備的主張

仮に、原告の代理権が認められないとしても、原告は、株式会社和興から本件第一物件の購入を勧められて三晃住建のために購入しようとしたが、売主が売却を急いでおり、三晃住建との連絡をつける間がなかったため、原告が堀田正義外五名から本件第一物件を購入する売買契約を締結し、その売買契約上の買主の地位を三晃住建に譲渡した。その後、原告は本件第一物件を中野商事に転売したが、その際、同物件の購入契約書が原告名義であったため原告名義の売買契約書を作成して売却し、右転売契約の後において、売主の地位を原告から三晃住建に譲渡した。

したがって、三晃住建が買主又は売主として本件第一物件の取引を行ったことになるから、譲渡益も同社に帰属する。

(3) 予備的主張

仮に、契約上の地位の譲渡の事実が認められないとしても、原告は、三晃住建との間において、原告が三晃住建の経営建て直しを支援し、両者が協力して不動産取引等を行ってその利益を三晃住建に取得させ、同社が原告から受注した建築工事を優先的に履行する旨の共同事業の合意(以下「利益分配契約」という。)をしており、右合意に基づいて、三晃住建は本件第一物件の譲渡益を取得した。

したがって、三晃住建は利益分配契約に基づき、本件第一物件の取引により生じた譲渡益を取得した。

しかるに、被告は、本件第一物件に係る譲渡益を原告の所得として認定して本件処分を行ったものであるから違法である。

(二) 原告は、昭和五三年三月七日、株式会社佐々木商会(以下「佐々木商会」という。)から、横浜市港北区篠原町一一八番三の土地(地積七一八・六六〇五平方メートル、地目-畑、以下「本件第二物件」という。)を購入する売買契約を締結したが、その際、佐々木商会から正規の売買代金に加えて裏金として坪当たり七万円、合計一五一九万円を支払うように要求され、原告は、本件第二物件を転売した時に右裏金を支払う条件で右申入れを承諾した。

原告は株式会社和興の美濃雅敏を介して仲介業者の浅井輝雄に本件第二物件の転売を依頼していたところ、浅井輝雄は、荒川芳三及び株式会社地建を介して有限会社山西工務店(以下「山西工務店」という。)を買主として探してきたが、本件第二物件の取引に関して荒川芳三が以前に経営しており昭和五三年一二月二八日当時休業していた株式会社サガミを介在させ、同社から山西工務店に転売して一部譲渡益を取得しようと企て、原告に株式会社サガミが買い受ける旨報告した。

原告は、昭和五三年一二月二八日、買主が株式会社サガミであると信じて、美濃雅敏、浅井輝雄、荒川芳三及び株式会社地建を介して、株式会社サガミに本件第二物件を八六九五万六〇〇〇円で転売し、手付金三〇〇〇万円を同社から受領した。

山西工務店の代表取締役は、昭和五四年六月中旬、美濃雅敏、浅井輝雄、荒川芳三と共に原告の営業所において中間金の授受をしたが、その際、山西工務店から佐々木商会に裏金一五一九万円が渡された。

したがって、原告は、株式会社サガミに本件第二物件を八六九五万六〇〇〇円で売却したのであり、仮に、山西工務店に一億〇二一四万六〇〇〇円で売却したとしても、一五一九万円が購入代金の一部として佐々木商会に支払われているから、同額の譲渡益を取得していない。

しかるに、被告は、原告が本件第二物件を山西工務店に一億〇二一四万六〇〇〇円で販売したと認定し、譲渡益一五一九万円が計上洩れであるとして原告の益金に右金額を加算して本件処分を行ったから違法である。

(三) 原告は、昭和五四年一月一九日、株式会社ホウシンハイムから神奈川県川崎市中原区井田字平台一二九三番の二十一の土地(地積一九九・一〇平方メートル、地目-宅地、以下「本件第三物件」という。)を一九五〇万円で購入し、数箇所に転売先を探させていたところ、浅井輝雄から三〇〇〇万円で買い受けるとの回答があったが、その後、株式会社善勝から三八〇〇万円ないし三九〇〇万円で購入するとの申出を受けたので、同社に売却することにした。ところが、浅井輝雄が先約であることを理由に抗議し、原告も浅井輝雄が優秀な能力を持ち、今後も同人と取引していく必要から、株式会社善勝への転売を諦め、本件第三物件を浅井輝雄に三〇〇〇万円で転売し、株式会社善勝には同人から購入させることにした。浅井輝雄は、本件第三物件の譲渡益に対する課税を逃れる目的から、荒川芳三を通じて南海総業株式会社(以下「南海総業」という。)の代表取締役根岸重三に話しをつけて南海総業を介在させたうえ、南海総業が原告から本件第三物件を買い受け、株式会社善勝の社員である内藤政和に三九〇〇万円で転売したように、仮装した取引を行った。

したがって、原告は、本件第三物件の取引により一〇五〇万円の譲渡益しか得ていない。

しかるに、被告は、原告が本件第三物件を内藤政和に三九〇〇万円で売却したものと認定し、譲渡益九〇〇万円が計上洩れであるとして原告の益金に右金額を加算して本件処分を行ったから違法である。

よって、原告は本件処分の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の冒頭部分は争う。

(一) 同2(一)の事実中、原告が堀田正義外五名から本件第一物件を購入し、これを中野商事に転売して七六三万二五〇〇円の譲渡益を取得した旨被告が主張していることは認め、その余は否認する。

(二) 同2(二)の事実中、原告が山西工務店に本件第二物件を売却して譲渡益を取得し、そのうち一五一九万円が計上洩れとなっている旨被告が主張していることは認め、その余は否認する。

(三) 同2(三)の事実中、原告が本件第三物件を内藤政和に三九〇〇万円で売却し、譲渡益のうち九〇〇万円が計上洩れである旨被告が主張していることは認め、その余は否認する。

三  被告の主張

1  所得金額

(一) 原告の本件事業年度の法人税の課税標準となる所得金額は、次のとおり、五七〇〇万一六二六円である。

番号 項目 金額

1 申告所得金額 二五五七万六九〇七円

2  不動産譲渡益計上洩れ 三一八二万二五〇〇円

3  寄付金損金不算入額容認 三九万七七八一円

4  所得金額(1+2-3) 五七〇〇万一六二六円

(二) 加算項目

原告は、次のとおり、本件事業年度において三件の不動産取引に係る譲渡益合計三一八二万二五〇〇円を益金の額に加算していなかったから、同金額を申告所得金額に加算すべきである。

(1) 本件第一物件譲渡益計上漏れ 七六三万二五〇〇円

原告は、昭和五四年八月二二日、堀田正義外五名から同人らの共有に係る本件第一物件を五一八〇万三五〇〇円で購入し、同年九月三日、中野商事に六三九三万六〇〇〇円で売却した。

原告は、本件第一物件の購入の際、古河産業に対し一〇〇万円を、泰栄商事株式会社(以下「泰栄商事」という)に対し二一二万円を、右物件の転売に際して、泰栄商事に対し一三八万円をそれぞれ仲介手数料として支払った。

したがって、原告は、本件第一物件の譲渡により、譲渡収入六三九三万六〇〇〇円から購入価格五一八〇万三五〇〇円、仲介手数料四五〇万円を控除した七六三万二五〇〇円の譲渡益を取得した。

しかるに、原告は、三晃住建に名義を貸し、同社が本件第一物件の取引を行ったとして、その譲渡益が同社に帰属することを前提に同物件の堀田正義外五名らへの購入代金並びに古河産業及び泰栄商事に対する各仲介手数料の各支払金額を三晃住建への貸付金として、また、同物件の中野商事に対する譲渡代金を三晃住建から貸付金の返済を受けたものとしてそれぞれ会計処理し、譲渡益七六三万二五〇〇円を本件事業年度の益金から除外して申告したから、右譲渡益を原告の申告所得金額に加算しなければならない。

(2) 本件第二物件譲渡益計上漏れ 一五一九万円

原告は、昭和五三年一二月二八日、山西工務店に対し、原告所有の本件第二物件を一億〇二一四万六〇〇〇円と(売買契約書には一億〇二一七万三三〇〇円と記載されているが、実測による修正後の売買代金は一億〇二一四万六〇〇〇円となっている。)で売却した。

しかるに、原告は、本件第二物件を株式会社サガミに八六九五万六〇〇〇円で売却し、株式会社サガミが山西工務店に同物件を譲渡したかのような売買契約書を作成し、それに対応した経理処理を行ったうえ、本件第二物件の譲渡収入を八六九五万六〇〇〇円として申告したから、本来の譲渡収入との差額一五一九万円を譲渡益として原告の申告所得金額に加算しなければならない。

(3) 本件第三物件譲渡益計上漏れ 九〇〇万円

原告は、昭和五四年三月三〇日、内藤政和に対し、原告所有の本件第三物件を三九〇〇万円で売却した。

しかるに、原告は、昭和五四年三月一九日に南海総業に本件第三物件を三〇〇〇万円で売却し、同社が同月三〇日内藤政和に同物件を三九〇〇万円で売却したかのような売買契約書を作成し、それに対応した経理処理を行ったうえ、同物件の譲渡収入を三〇〇〇万円であると申告したから、本来の譲渡収入との差額九〇〇万円を譲渡益として原告の申告所得金額に加算しなければならない。

(三) 減算項目及び金額

寄付金損金不算入額認容 三九万七七八一円

原告は、本件事業年度の確定申告に当たり寄付金の損金不算入額を三二八万〇五〇九円として申告所得金額を算出しているが、前記(二)のとおり譲渡益計上漏れ合計三一八二万二五〇〇円を申告所得金額に加算したことに伴ない、寄附金の損金不算入額は別紙寄附金の損金不算入額の計算表記載のとおり二八八万二七二八円(同表(3)参照)となる。

したがって、確定申告に係る寄附金損金不算入額三二八万〇五〇九円と二八八万二七二八円との差額三九万七七八一円を申告所得金額から減算する。

2 課税土地譲渡利益金額

(一) 原告の本件事業年度における課税土地譲渡利益金額は、次のとおり、七〇八二万〇六九〇円である。

番号 項目 金額

1 土地譲渡による収益の額 一二億八六八四万〇四〇〇円

2 右に対応する原価の額 一〇億九〇〇三万六四四〇円

3 負債利子の額 四三二六万四一一八円

4 販売費及び一般管理費 八二七一万九一五二円

5 課税土地譲渡利益金額(1-《2+3+4》) 七〇八二万〇六九〇円

(二) 本件第一ないし第三物件の取引は、昭和五五年三月法律第九号による改正前の租税特別措置法(以下「措置法」という。)六三条一項が適用されるものであるから、これらの取引について前記1(二)の取引事実に基づいて課税土地譲渡利益金額を計算し直すと次のとおりとなる。

(1) 土地譲渡収益の金額 一二億八六八四万〇四〇〇円

土地譲渡収益の金額は、次の<1>及び<2>の合計一二億八六八四万〇四〇〇円である。

<1> 申告に係る収益の金額 一一億九八七一万四四〇〇円

<2> 本件更正処分により加算する収益の金額 八八一二万六〇〇〇円

本件第一物件については、前記1(二)(1)のとおり、中野商事に対する譲渡金額六三九三万六〇〇〇円、本件第二物件については、前記1(二)(2)のとおり、山西工務店に対する譲渡金額一億〇二一四万六〇〇〇円と原告の計上した収益の額八六九五万六〇〇〇円との差額金一五一九万円、本件第三物件については、前記1(二)(3)のとおり、内藤政和に対する譲渡金額三九〇〇万円と原告の計上した収益の額三〇〇〇万円との差額金九〇〇万円の合計八八一二万六〇〇〇円を土地譲渡による収益の額に加算する。

(2) 土地譲渡収益に対応する原価の額 一〇億九〇〇三万六四四〇円

土地譲渡収益に対応する原価の額は、次の<1>及び<2>の合計一〇億九〇〇三万六四四〇円である。

<1> 申告に係る原価の額 一〇億三五一一万二九四〇円

<2> 本件更正処分により加算する原価の額 五四九二万三五〇〇円

本件第一物件について、前記1(二)(1)のとおり、購入価額五一八〇万三五〇〇円及び購入の仲介手数料三一二万円の合計五四九二万三五〇〇円を原価の額に加算する。

(3) 譲渡経費 一億二五九八万三二七〇円

本件事業年度の譲渡のために直接及び間接に要した経費(以下「譲渡経費」という。)の額は、次の<1>及び<2>の合計一億二五九八万三二七〇円である。

なお、原告は、譲渡経費の額に関し、負債利子の額は措置法施行令三八条の四第六項一号の規定(概算法)により、販売費及び一般管理費(以下「販売費等」という。)は同条八項の規定(実額配賦法)により計算しているので、同様の方法により計算する。

<1> 負債利子の額 四三二六万四一一八円

負債利子の額は、申告に係る負債利子の額四二九八万九五〇一円に本件更正処分により加算する負債利子の額二七万四六一七円を加算した四三二六万四一一八円である。

本件更正処分により加算する負債利子は、年六パーセントの割合により本件第一物件の保有期間である昭和五四年八月二二日から同年九月三日までの一箇月間につき、次のとおり算出した。

(本件第一物件の原価) (利率) (期間)

5492万3500円×0.06×1/12=27万4617円

<2> 販売費等の額 八二七一万九一五二円

販売費等の額は、申告に係る販売費等の額八〇一二万二四〇二円に本件更正処分により加算する販売費等の額二五九万六七五〇円を加算した八二七一万九一五二円である。

本件更正処分により加算する販売費等の額は、次のア及びイの合計金額二五九万六七五〇円である。

ア 直接配賦額は、前記1(二)(1)のとおり、本件第一物件の譲渡に係る仲介手数料一三八万円である。

イ 間接配賦額について、原告は、申告において間接配賦率を〇・〇四二として算定しているが、本件事業年度中に保有していた土地及び建物に係る間接費八〇七〇万八三八〇円(申告金額)を右土地及び建物の完成工事原価の総額一九億六一八六万四四七四円(申告に係る一九億〇六九四万〇九九四円に本件第一物件の購入価格五一八〇万三五〇〇円及び購入の仲介手数料三一二万円を加算した金額)で除して間接配賦率を算定すると〇・〇四一となる。

右完成工事原価の総額一九億六一八六万四四七四円のうち、本件事業年度中に売却された土地のみに係る完成工事原価の額一〇億九〇〇三万六四四〇円について、右間接配賦率〇・〇四一を適用して間接配賦額を計算すると別表間接配賦額の計算表の「被告配賦計算C」欄記載のとおり四四六九万一四八四円となる。

したがって、別表間接配賦額の計算表の「被告配賦計算C」欄記載の四四六九万一四八四円と同表の「原告配賦計算B」欄記載の四三四七万四七三四円(但し、前記から繰り越された間接配賦額一五九九万九九六四円を除いた金額)との差額一二一万六七五〇円を加算する。

3 本件賦課決定

本件更正処分に伴って増加する法人税額は一八六二万四〇〇〇円であるが、次のとおり、原告は法人税の課税標準等又は税額の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし又は仮装したものと認められ、かつ、本件更正処分により増加した税額すべてが原告の右行為に基づくものであるから、昭和五九年三月法律第五号による改正前の国税通則法(以下「国税通則法」という。)六八条一項の規定による重加算税を賦課すべき対象として、増加税額に一〇〇分の三〇の割合を乗じて計算した五五八万七二〇〇円の重加算税を賦課決定した。

(一) 原告は、前記1(二)(1)のとおり、三晃住建が本件第一物件を取引したかのような売買契約書を作成し、同物件の取引において授受された売買代金、仲介手数料をそれぞれ三晃住建に対する貸付金とし、さらに、転売代金をその返済であるかのごとく仮装して会計処理し、本件第一物件の譲渡益七六三万二五〇〇円を益金の額に算入しなかった。

(二) 原告は、前記1(二)(2)のとおり、本件第二物件を山西工務店に一億〇二一四万六〇〇〇円で譲渡したにもかかわらず、これを株式会社サガミに八六九五万六〇〇〇円で譲渡したかのごとく仮装する売買契約書を作成し、かつ、これに応じた会計処理を行って、本件第二物件の譲渡益のうち右差額金一五一九万円を益金の額に算入しなかった。

(三) 原告は、前記1(二)(3)のとおり、本件第三物件を内藤政和に三九〇〇万円で譲渡したにもかかわらず、これを南海総業に三〇〇〇万円で譲渡したかのごとく仮装する売買契約書を作成し、かつ、これに応じた会計処理を行って、本件第三物件の譲渡益のうち右差額金九〇〇万円を益金の額に算入しなかった。

(四) 原告は、前記2のとおり、課税土地譲渡利益金額を七〇八二万円(千円未満の端数を切り捨てた。)とすべきところ、四〇四八万九〇〇〇円として申告したのであるが、これは右(一)ないし(三)の行為に基づくものである。

四  被告の主張に対する認否

1(一)  被告の主張1(一)の事実中、原告の申告所得金額が二五五七万六九〇七円であることは認め、その余は否認する。

(二)  同1(二)の冒頭部分は争い、(1)ないし(3)の各事実は否認する。

(三)  同1(三)の事実中、別紙寄附金の損金不算入額の計算表記載のとおり原告の本件事業年度における資本金が一〇〇〇万円であること、原告が本件事業年度において寄付金額を三六〇万円、寄附金不算入額を三二八万〇五〇九円として申告したことは認め、その余は否認する。

2(一)  被告の主張2(一)の事実は否認する。

(二)  同2(二)(1)の事実中、原告が土地譲渡収益の金額を一一億九八七一万四四〇〇円と申告したことは認め、その余は否認する。

同2(二)(2)の事実中、原告が土地譲渡収益に対応する原価の金額を一〇億三五一一万二九四〇円と申告していたことは認め、その余は否認する。

同2(二)(3)の事実中、原告が負債利子の金額を四二九八万九五〇一円、販売費等の金額を八〇一二万二四〇二円、本件事業年度中に保有していた土地及び建物に係る間接費を八〇七〇万八三八〇円、本件事業年度中の土地及び建物の完成工事原価を一九億〇六九四万〇九九四円とそれぞれ申告していたこと、原告が別表間接配賦額の計算表のうち「土地原価」欄の中野商事に対する部分、「被告配賦計算C」欄及び「差額」欄の各記載を除く部分のとおり申告していたことは認め、その余は否認する。

3  被告の主張3の事実は否認する。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  本件第一ないし第三物件の譲渡益、その帰属について判断する。

1  本件第一物件について考察する。

(一)  成立に争いのない甲第一号証、第一一、一二号証、乙第一、二号証、第四、五号証、第一六号証の一、第二一、二二号証の各一、第二三号証、原本の存在及びその成立に争いのない乙第三号証、第一六号証の1ないし五、第二一号証の二、第二二号証の二ないし五、証人鈴木彦太郎の証言により真正に成立(写しについては原本の存在と成立)したと認められる甲第一三、一四号証の各一、二、第一八号証の一、二(但し、甲第一八号証の一のうち三晃住建作成部分を除く。)、第一九号証の一ないし四、第二〇号証の一ないし三、第二一号証、第三二、三三号証、第五三号証の一、二、第五四、五五号証、弁論の全趣旨により真正に成立(写しについては原本の存在と成立)したと認められる甲第二号証、第三号証の一ないし三、第四号証の一、二、第五号証の一ないし七、第六号証の一、二、第七号証の一ないし三、第八号証の一、二、第九号証の一ないし三、第一〇号証、第一五号証、第一六号証の一、二、第四三号証(但し、後記の措信できない部分を除く。)、第四五ないし第五二号証、証人美濃雅敏(但し、後記の措信できない部分を除く。)、同兵頭菊雄の各証言、原告代表者鈴木操尋問の結果によれば、次の事実が認められる。

(1) 原告と三晃住建との関係

原告は、建築工事業等を営む株式会社であるが、昭和五二年ころから三晃住建に対し、分譲住宅の建築工事を請け負わせていた。

三晃住建は、昭和三四年七月一四日に設立された建築工事の請負等を目的とする資本金二五〇〇万円の株式会社であるが、大手の不動産会社から建築工事を受注していたため利益率が低く、昭和五二年暮ころから資本金繰りに窮し下請業者に対して同社振出の手形で支払いをしなければならなくなり、その後右手形を満期に決済できず支払期日の延期を求める事態に陥った。

原告は、三晃住建に対し、昭和五三年一月二四日に横浜市港北区新羽町の分譲住宅新築工事を四二〇八万七五〇〇円(甲第三号証の一)で、同年三月三〇日に右追加工事を四五五万円(甲第三号証の二)で、昭和五四年五月一日に横浜市港北区篠原北町の菊名分譲住宅新築工事を一三五〇万円(甲第三号証の三)で、同年一〇月ころ峰岡三ッ沢公園における新築工事を一〇〇〇万円(甲第六号証の一)でそれぞれ発注して請け負わせていた。

原告は、三晃住建が経営難に陥って資金繰りに窮したことから、原告発注の工事を行えなくなる事態をおそれ、また、三晃住建の過去の実績からして原告の有力な下請業者にしたいとの意向もあって、同社の再建に協力することにし、昭和五四年六月一二日、三晃住建の有力な下請業者九社、三晃住建の代表取締役社長小林康彦、専務取締役鈴木彦太郎を原告事務所に集めて「三晃住建株式会社下職会議」を開催し、同社の経営状況を説明したうえ、原告の代表取締役鈴木操から下請業者に対し、同代表取締役が三晃住建の経営に関与して利益を確保し、下請業者に対する支払いを原告を通じて行うこと、三晃住建の負債は原告の手形及び原告の裏書した手形で三年間にわたって支払うこと、三晃住建が今後発注する仕事については、原告が半額を現金で、半額を手形で支払うこと等を内容とする再建案を提案し、同月一七日に三晃住建の全下請業者を集めて右再建案を協議することにした(甲第三二号証)。

原告は、さらに、昭和五四年六月一七日、三晃住建の下請業者三五社のうち三〇社(一社は委任状を提出した。)を集め、小林康彦、鈴木彦太郎の各出席のうえ、原告の代表取締役鈴木操が三晃住建の下請業者に対する発注、支払いを担当し、三晃住建は工事の施工のみに専念すること、三晃住建から原告に社員一名を出向させて、原告の代表取締役鈴木操が三晃住建の過去の負債返済も管理すること、同社が今後発注する下請代金は原告振出の小切手又は手形で原告の支払方法により支払うこと等を内容とする再建案を提案し、下請業者の賛同を得て右再建案が承認された(甲第三三号証)。

三晃住建は、原告の事務所に専務取締役鈴木彦太郎を常駐させ、また、原告の代表取締役鈴木操に三晃住建のゴム印、契約印を預け、さらに、昭和五四年一二月当時原告から約一億円の資金援助を受けていたが、全面的な資金援助を受けていたわけではなく、三晃住建の代表取締役小林康彦が資金繰りに奔走しなければならない状況であった。

そして、三晃住建は、代表取締役小林康彦が昭和五四年一二月二〇日に失踪し、同月二七日決済の手形を不渡りとして負債総額約二億三〇〇〇万円を残して倒産した。

原告は、三晃住建所有の土地を原告名義に所有権移転登記していたため、右倒産後に三晃住建との間で訴訟となり原告の三晃住建に対する負債の代物弁済として右土地を取得することで訴訟上の和解が成立し、原告の三晃住建に対する債権は全額返済された。

(2) 本件第一物件の取引状況

古河産業の取締役であった堀田正義は、堀田義之、堀田知明、小野富美、堀田裕子、堀田温子と共に本件第一物件を相続により取得し、昭和五四年五月ころ他の共有者と共に古河産業不動産部を介して売りに出していた。

泰栄商事は、古河産業から本件第一物件の売却を依頼され、泰栄商事の代表取締役石塚泰弘と同郷である株式会社和興の経営者美濃雅敏に買手を探させたところ、同人は原告に本件第一物件の購入を勧め、原告の代表取締役から本件第一物件の購入について一任を取りつけた。

原告は、昭和五四年八月当時営業部員がいなかったため、美濃雅敏を原告社員として本件第一物件の購入に関する交渉を一切任せ、同月二〇日ころ売買代金額について合意し、同月四月二二日、古河産業の事務所において、売主の一人である堀田正義、売主側の仲介業者古河産業の星野章、買主の代理人美濃雅敏、買主側の仲介業者石塚泰弘が集まって原告が堀田正義外五名から本件第一物件を五一八〇万三五〇〇円で買い受け、手付金五〇〇万円を同日支払い、残金は同年九月二七日に所有権移転登記手続を完了した際に支払う内容の売買契約を締結し、その旨の不動産売買契約書(乙第一号証)を作成した。そして、美濃雅敏が堀田正義に五〇〇万円を支払い、同人から同額の原告宛領収書を受領した。

その後、美濃雅敏は、原告から依頼されて本件第一物件の転売先を探していたところ、昭和五四年九月三日、泰栄商事の仲介により中野商事に売却することが決まり、同日、原告が中野商事に本件第一物件を六三九三万六〇〇〇円で売却する内容の売買契約を締結し、その旨の土地売買契約書(乙第三号証)を作成し、中野商事から受領した手付金四五〇万円を川崎信用金庫住吉支店の原告名義の当座預金に入金した(甲第五一号証)。

原告は、本件第一物件の購入に関して、昭和五四年九月四日に泰栄商事に二一二万円を、同月二七日に古河産業に一〇〇万円をそれぞれ仲介料として支払い、また、本件第一物件の転売に関して、右同日、泰栄商事に一三八万円の仲介手数料を支払い、泰栄商事及び古河産業からそれぞれ昭和五四年九月二七日付けで三晃住建宛の領収証(甲第二〇号証の一ないし三)を受領した。

美濃雅敏は、本件第一物件の購入契約後、原告から本件第一物件の取引を三晃住建の名義で行う旨の要請を受け、古河産業の星野章にその旨を伝えたうえ、昭和五四年九月二七日、堀田正義外五名に残金を支払う際、三晃住建のゴム印及び契約印を持参してその場で当初の不動産売買契約書(乙第一号証)の本文中及び末尾の各買主欄に三晃住建のゴム印及び契約印を押捺した紙片を貼付した。

また、美濃雅敏は、右同日、堀田正義外五名から中野商事に中間省略による本件第一物件の所有権移転登記手続を行うとともに転売残代金を受領したが、その際、当初の原告と中野商事との土地売買契約書(乙第二号証)を回収して、契約書の本文中及び末尾の各売主欄を三晃住建とする新たな土地付建物売買契約書(乙第五号証)と差し換えた。

(3) 原告の経理状況

原告は、昭和五四年八月二二日、大和銀行川崎支店の原告名義の当座預金から五〇〇万円を払戻して堀田正義外五名に対する手付金に当て(甲第四五号証)、同年九月二七日、協和銀行綱島支店の原告名義の当座預金から三〇二八万五九〇〇円を(甲第四七号証)、三菱銀行元住吉支店の原告名義の当座預金から一六五一万七六〇〇円を(甲第四九号証)それぞれ払戻して売買残代金の支払いにあてた。

原告は、三晃住建の専務取締役鈴木彦太郎から、本件第一物件の手付金を借用目的とする三晃住建作成名義の昭和五四年八月二二日付け額面金額五〇〇万円の借用証(甲第一三号証の一)及び本件第一物件の残代金、仲介手数料を借用目的とする同年九月二七日付け額面金額五一三〇万三五〇〇円の借用証(甲第一三号証の二)をそれぞれ受領した。

また、原告は、三晃住建に対する貸付金元帳の昭和五四年八月二二日欄に「世田ケ谷土地仕入契約金」と記載して借方に五〇〇万円と記入し(甲第一一号証)、大和銀行の当座元帳の同月二〇日欄に「貸付金三晃住建(株)世田ケ谷土地仕入契約金」と記載して引出金額欄に五〇〇万円と記入し(甲第四六号証)、また、同月四日、川崎信用金庫住吉支店の原告名義の当座預金に四五〇万円を入金し(甲第五一号証)、川崎信用金庫の当座元帳の同日欄に「貸付金三晃住建(株)」と記載して預入金額欄に四五〇万円と記載し(甲第五二号証)さらに、協和銀行の当座預金元帳の同年九月二七日欄に「貸付金三晃住建(株)太子堂土地残金預手分」と記載して引出金額欄に三〇二八万五九〇〇円と記入し (甲第四八号証)、三菱銀行当座預金元帳の同日欄に「貸付金三晃住建(株)太子堂土地残金預手分」と記載して引出金額欄に一六五一万七六〇〇円と記入し、同元帳の同日欄に「太子堂土地仲介料」と記載して引出金額欄に三五〇万円、一〇〇万円と記入した(甲第五〇号証)。

そして、原告は、三晃住建に対する貸付元帳の昭和五四年九月二七日欄に「三菱当座太子堂土地残金預手分」と記載して借方欄に一六五一万七六〇〇円、「三菱当座太子堂土地仲介料」と記載して借方欄に四五〇万円、「協和当座太子堂土地残金預手分」と記載して借方欄に三〇二八万五九〇〇円、「三菱当座太子堂土地売上代金」と記載して貸方欄に五九四三万六〇〇〇円と記入した(甲第一一号証)。

三晃住建は、短期借入金元帳の昭和五四年八月二二日欄に「不動産前払金下田工務店土地代借入」と記載して貸方欄に四六八〇万三五〇〇円とそれぞれ記入し(甲代五三号証の一)、同元帳の右同日欄に「販売不動産売上下田工務店」と記載して借方欄に五〇〇万円同年九月二七日欄に「不動産前払金下田工務店」と記載して貸方欄に四六八〇 万三五〇〇円とそれぞれ記入し(甲第五三号証の一)、同元帳の右同日欄に「販売不動産売上下田工務店」と記載し て借方欄に七六三万二五〇〇円、四六八〇万三五〇〇円、五〇〇万円と記入し(甲第五三号証の二)、また、不動産前払金元帳の同年八月二二日欄に「短期借入金下田工務店」と記載して借方欄に五〇〇万円、同年、九月二七日欄に「短期借入太子堂土地堀田正義他」と記載して借方欄の四六八〇万三五〇〇円と記入し(甲第五四号証)、さらに、販売不動産売上元帳の同月三日欄に「不動産支払手数料太子堂土地」と記載して貸方欄に二一二万円、同月二七日欄に「不動産支払手数料太子堂土地」と記載して貸方欄に一三八万円、一〇〇万円、同月二八日欄に「短期借入金太子堂土地」と記帳して貸方欄に四六八〇万三五〇〇円、五〇〇万円と記入した(甲第五五号証)。

以上の認定に反する証拠は次に判示するとおり信用できない。

すなわち、証人美濃雅敏の証言中には、美濃雅敏が古河産業の星野章に対し、本件第一物件の売買契約の際、三晃住建が買主となるのであって原告ではないと伝えていた旨の証言部分があるが、右証言部分は、前顕乙第二一号証の一(星野章の聴取書)に照らして信用できない。

また、証人美濃雅敏の証言中には、美濃雅敏が三晃住建の代理人として本件第一物件の取引を行った旨の証言部分があるが、右証言部分は、前顕乙第四号証(中野篤の聴取書)、第二一号証の一(星野章の聴取書)に照らして信用できないばかりでなく。美濃雅敏の右証言部分は曖昧であるうえ、原告代表者鈴木操の供述中にも同人に三晃住建の代理権を与えた旨の供述がないことからしても信用できない。

さらに、証人鈴木彦太郎の証言中には、三晃住建の代表取締役小林康彦は三晃住建が本件第一物件を購入する話を原告の代表取締役鈴木操から聞いて承諾していたが、たまたま売買契約時に不在であったために売買契約に立ち合うことができず、そのために原告の名義を借りて契約したものの、原告は当初から買主を三晃住建とするつもりであって、三晃住建も本件第一物件の転売予想利益を六〇〇万円と予想し、原告からこれを転売前に手形決済資金として借りていた旨の証言部分があり、前顕甲第四三号証の記載中にもこれに沿う記載部分があり、さらに、前顕甲第一二号証によれば、原告が三晃住建に対し、昭和五四年九月八日の二〇〇万円、同月二五日に二〇〇万円と六〇〇万円を貸し渡していることが認められる。

しかし、右証言及び記載部分は前顕乙第二三号証(小林康彦の聴取書)、証人美濃雅敏、原告代表者鈴木操の各供述にも反した内容で信用し難いうえ、原告が昭和五四年八月二二日当時三晃住建に本件第一物件の取引に関連して六〇〇万円を貸し付けたことを裏付ける証拠はなく、むしろ、原告は三晃住建に対し、同社の資金繰りを助けるために右当時継続的に資金援助を行っていたのであるから、転売利益を担保にしなければ貸付に応じないという関係にはなかったのであって、右証言及び記載部分はその点からしても信用できない。

その他、右認定を覆すに足る証拠はない。

(二)  右認定事実を前提にして、本件第一物件の譲渡利益の帰属について考察する。

美濃雅敏は、原告の社員として、昭和五四年八月二二日に堀田正義外五名から本件第一物件を買い受ける売買契約を締結して手付金を支払い、同年九月三日に同物件を中野商事に転売したものであるから、本件第一物件の売買取引によって生じた譲渡益七六三万二五〇〇円(譲渡収入六三九三万六〇〇〇円から購入価格五一八〇万三五〇〇円及び仲介手数料合計四五〇万円を控除した金額)は原告に帰属するものである。

なお、原告は、右譲渡益が三晃住建に帰属する旨を主張するが、次に判示するとおり右主張は失当である。

(1) 原告は、原告の代表取締役鈴木操が三晃住建の代理人として本件第一物件の取引をおこなったのであるから、同物件の譲渡益が三晃住建に帰属する旨主張する。

しかし、右原告の代表取締役は本件第一物件の売買契約及び転売契約を美濃雅敏に任せていたが、堀田正義外五名との売買契約及び中野商事との転売契約のいずれについても原告名義で売買契約書(乙第一号証、第三号証)を作成し、かつ、右いずれの契約当時においても、原告の代表取締役鈴木操が三晃住建の代理人である旨を表示したと認めるに足る証拠はないのであって、前顕乙第二号証、第四号証、第二一号証の一によれば、堀田正義及び星野章は本件第一物件の買主が原告であると考えていたこと、中野商事の代表取締役中野篤も本件第一物件の売主を原告であると考えていることが認められる。

また、原告の代表取締役鈴木操は、昭和五四年六月一七日以降三晃住建の経営、資金繰り等に関与し、同社の契約印、ゴム印等を預かっていたのであるが、前顕乙第二三号証、証人鈴木彦太郎の証言に照らすと、原告又は右原告の代表取締役が三晃住建から不動産取引を行う一切の代理権まで与えられていたとは考えられず、また、右原告の代表取締役が三晃住建から本件第一物件の取引について代理権を与えられていたと認めるに足る証拠もない。

したがって、右原告の代表取締役が三晃住建の代理人として本件第一物件の取引を行ったとは認められないばかりでなく、代理権を授与されていたことも認められず、原告の右主張は失当である。

(2) 原告は、堀田正義外五名との売買契約における買主たる地位を三晃住建に譲渡し、また、中野商事との売買契約における売主たる地位を三晃住建に譲渡したから、譲渡益が三晃住建に帰属する旨主張する。

しかし、原告が三晃住建に右各売買契約上の買主又は売主たる地位を譲渡したと認めるに足る証拠はなく、また、原告主張のごとく、購入契約及び転売契約の成立後に売買契約上の買主たる地位及び転売契約上の売主たる地位を譲渡することは、特段の事情がない限り譲渡益の贈与というべきものであるところ、右特段の事情を認めるに足る証拠はなく(三晃住建の再建に協力する趣旨であれば、同社を取引当事者とすれば足りる。)、このような契約上の地位の譲渡を行うことは、課税を免れる目的以外になんらの合理性もなく、経済的合理性を追及する法人である原告の行為としては著しく不合理なものであって、このような譲渡が行われたとは考え難い。

したがって、原告が三晃住建に契約上の地位を譲渡した旨の主張は失当である。

(3) 原告は、三晃住建との間において、原告が三晃住建を支援する目的から両者が協力しあって不動産取引を行い、その譲渡益を三晃住建に帰属させる旨の利益分配契約があったから、本件第一物件の取引による譲渡益も三晃住建に帰属する旨主張し、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第四四号証、証人鈴木彦太郎の証言、原告代表者尋問の結果によれば、三晃住建は、原告からの資金援助を受けて、横浜市港北区篠原西町一一七番の土地(以下 「訴外物件」という。)等を購入し建物を建築したうえ、建売住宅として販売して利益を得ていたことが認められる。 しかし、右利益分配契約の趣旨は必ずしも明確でないうえ、そもそも原告名義で行った不動産取引の効果が右利益分配契約により三晃住建に帰属する法的根拠が判然とせず、単に、原告が三晃住建に譲渡益を贈与する契約としか考えられないのであり、また、訴外物件の取引についても、前顕甲第四四号証、弁論の全趣旨により真正に成立(写しについては原本の存在と成立)したと認められる甲第五六ないし第五八号証によれば、原告は昭和五三年三月七日佐々木商会から訴外物件を五二三九万六二〇〇円で買い受け、同日三晃住建に五五七七万六六〇〇円で転売していることが認められるのであってて、三晃住建が原告から資金援助を受けて訴外物件を取得したとしても、訴外物件を原告から買い受ける売買契約をしているのであるから、三晃住建がその後に訴外物件を転売して譲渡益を取得するのは当然であって、右事実をもって、本件第一物件の取引により生じた譲渡益が三晃住建に帰属する証拠とはできない。

したがって、利益分配契約に基づき、本件第一物件の譲渡益が三晃住建に帰属する旨の主張は失当というほかはない。

(4) もっとも、原告は、経理処理上、本件第一物件の購入費、仲介手数料を三晃住建に対する貸付金として計上し、その後返済項目で経理処理をしており、また、三晃住建も、本件第一物件の購入費、仲介手数料を原告からの借入金として計上し、転売金額、仲介手数料を販売不動産売上元帳に計上していることからして、経理上は、原告が三晃住建に資金援助を行って、三晃住建が本件第一物件の取引を行ったかのようである。

しかし、本件第一物件の取引は、原告が契約当事者として購入価格、転売価格を決定し、売買契約書も原告名義で作成され、売主の一人である堀田正義、転売人の中野商事の代表取締役も原告を契約当事者と考えていたというのであるから、原告が契約当事者であって、経理処理上の操作は単に譲渡益が三晃住建に帰属したごとく仮装し、原告に対する課税を免れる目的以外には考えられず、右経理処理の事実をもって、譲渡益が三晃住建に帰属するとは到底認められない。

(5) 以上のとおり、本件第一物件の取引により、原告は、七六三万二五〇〇円の譲渡益を取得したというべきである。

2  本件第二物件について考察する。

(一)  前記1(二)(3)認定の事実に加えて、前顕甲第四四号証、第五六ないし第五八号証、成立に争いのない甲第二二号証の一、乙第七、八号証、第一八号証の三、四(原本の存在も争いがない。)、第二七号証、証人浅井輝雄の証言により真正に成立したと認められる甲第三四号証、乙第九号証、証人浜頭菊雄の証言により真正に成立したと認められる乙第六号証、第二六号証、弁論の全趣旨により真正に成立(写しについては原本の存在と成立)したと認められる甲第二二号証の二、第二三、二四号証、第二五号証の一、二、第五九ないし第七四号証、乙第一八号証の一、二、第三〇号証の一ないし四、証人浅井輝雄(但し、後記の措信できない部分を除く。)、同荒川芳三(但し、後記の措信できない部分を除く。)、同佐々木理一郎、同浜頭菊雄の各証言、原告代表者鈴木操尋問の結果(但し、後記の措信できない部分を除く)、によれば、次の事実が認められる。

(1) 本件第二物件の購入状況

原告は、昭和五三年三月七日、本件第二物件を六七三九万〇九〇〇円(坪当たり三一万円、甲第二五号証の二)で、同物件の隣地にある訴外物件を五二三九万六二〇〇円(坪当たり三一万円の実測売買であり、実測後に精算する約定があった。甲第五八号証)でそれぞれ佐々木商会から買い受けたが、同日三晃住建に対して訴外物件を五五七七万六六〇〇円(坪当たり三三万円の実測売買であり、実測後に精算する約定であった。)で売り渡した(甲第五六号証)。 三晃住建は、訴外物件の仕入先である佐々木商会が裏金(売買契約書に記載した売買価格に上乗せした金員)の支払いを求めていると原告から聞き、原告に対し、昭和五三年三月七日、手付金として二〇〇〇万円の小切手(甲第五七号証)を渡したほかに佐々木商会に対する裏金として一〇〇〇万円の現金を渡した。そこで、原告は佐々木商会に対し、同日、訴外物件及び本件第二物件の手付金各一〇〇〇万円を右小切手で支払い(甲第五九号証、第六一号証)、また、三晃住建から受領した現金一〇〇〇万円を裏金として渡した。

(2) 本件第二物件の転売状況

原告は、浅井輝雄に本件第二物件の売却を依頼していたところ、同人が三和ホーム株式会社(以下「三和ホーム」という。)、神田信夫、荒川芳三、株式会社地建の沖中浩を介して山西工務店を買主として探してきた。

ところで、株式会社共信不動産(以下「共信不動産」という。)は、山西工務店の従業員から原告所有の本件第二物件を購入するように勧められたが、同物件に建築許可が下りるかどうかが不明なため、山西工務店に資金を出して同社に購入させることにし、同社をして原告に買受けの意思を表示させた。

原告は浅井輝雄に対し、本件第二物件の売却に関して売買契約書記載の売買代金以外に裏金を貰わないと売却しない旨の条件を付けて転売依頼していたが、不動産の購入者は裏金を嫌うので、荒川芳三、沖中浩、神田信夫、三和ホームの専務取締役田中孝一郎らは相談のうえ、荒川芳三が昭和四五年ころに横浜市内に設立した不動産会社である株式会社サガミを本件第二物件の取引に介在させ、同社が原告から本件第二物件を買い受け山西工務店に売却したように仮装し、契約書上において、株式会社サガミの購入代金と転売代金との差額を原告に対する裏金資金に当てることにした。

なお、株式会社サガミは、昭和四八年一二月ころに倒産し、その後全く営業活動を行っていなかった。

そこで、売主側から原告の代表取締役鈴木操、浅井輝雄、荒川芳三、沖中浩と買主側から山西工務店の従業員二名共信不動産の代表取締役黒田弘之、三和ホームの田中孝一郎が昭和五三年一二月二八日に原告の事務所に集まり、原告が山西工務店に本件第二物件を売り渡す旨の売買契約を締結することになった。

黒田弘之は、昭和五三年一二月二八日、本件第二物件の売買契約の際、売主側から突然売主を株式会社サガミにするといわれ、同社のことを知らず、同社も同社の代表取締役である荒川芳三も信用できなかったため右原告の代表取締役に売買契約上の責任の所在について承認を求めたところ、右原告の代表取締役が形式上の売主を株式会社サガミにするだけで実質的な売主は原告であって、原告が売買契約の責任をもつことを確約したので、浅井輝雄から売買契約の不履行については原告と連帯して責任を負う旨の念書(乙第九号証)を差し入れさせたうえ、山西工務店が株式会社サガミから本件第二物件を買い受ける内容の売買契約書作成を承諾した。

そして、右原告の代表取締役の面前において、株式会社サガミの代表取締役荒川芳三と山西工務店の社員は、山西工務店が株式会社サガミから本件第二物件を一億〇二一七万三三〇〇円(但し、坪当たり四七万円の実測売買であり実測後に精算する約定である。)で買い受け、手付金三〇〇〇万円、中間金五〇〇万円、売主が宅地造成の許可申請から工事完了検査までの手続を終了し、所有権移転登記手続の準備ができた時点において残代金六七一七万三三〇〇円を支払う内容の土地売買契約書(乙第六号証)を作成し、三和ホームが仲介人として右契約書に記名捺印した。そして、黒田弘之は荒川芳三に対し、手付金として額面金額一〇〇〇万円の小切手三通を渡し、引き換えに株式会社サガミ作成名義の領収証(乙第三〇号証の一)を受領したところ、荒川芳三は黒田弘之の面前で右小切手を右原告の代表取締役に渡した。

原告は、株式会社サガミに本件第二物件を八六九五万六〇〇〇円で売り渡す旨の昭和五三年一二月二八日付け土地売買契約書(甲第二二号証の一)を作成し、浅井輝雄が右契約書に仲介人として記名捺印し、また、株式会社サガミ宛の三〇〇〇万円の昭和五三年一二月二八日付け領収書(甲第二二号証の二)を作成した。

その後、本件第二物件を実測したことにより、原告の山西工務店に対する売却価格は、一億〇二一七万三三〇〇円から一億〇二一四万六〇〇〇円に減額された。

黒田弘之は、山西工務店の従業員から中間金を現金で支払うように要請され、原告の代表取締役鈴木操に対し、原告事務所において昭和五四年四月一〇日に五〇〇万円を現金で支払い、引き換えに株式会社サガミ作成名義の領収証(乙第三〇号証の二)を受領し、また、同年六月二〇日に一〇一九万円を現金で支払い、引き換えに株式会社サガミ作成名義の領収証(乙第三〇号証の三)を受領した。

原告は、昭和五四年六月二〇日、浅井輝雄に対し、仲介手数料二六〇万円を小切手二通(額面金額一六〇万円と一〇〇万円の各小切手、甲第七三号証)で支払った(甲第二三号証、第二五号証の一)。

なお、原告は、昭和五四年六月二〇日、山西工務店との間において、原告が山西工務店に対し、本件第二物件の売買代金について今後中間金の請求をしないこと、山西工務店が建築確認のおりた建物の工事に着工することを無条件で認め、かつ、山西工務店が分割して所有権移転登記手続を求めた際にはその部分の代金決済を条件に所有権移転登記手続に協力すること、原告は山西工務店に対して責任をもって本件第二物件の宅地造成に関する工事の検査済証を取得することをそれぞれ約し、その旨の合意書(乙第一八号証の三)を作成した。

また、原告は、昭和五四年一〇月一二日、山西工務店との間において、同社が原告に本件第二物件の残代金五六九五万六〇〇〇円を同月三〇日午前一一時に白井司法書士事務所で支払うこと、原告が本件第二物件の建築確認の促進に協力するが、不許可となっても、山西工務店が原告に責任のないことを認めることを約し、その旨の覚書(乙第一八号証の四)を作成した。

原告は、右覚書に従って、昭和五四年一〇月三〇日白井司法書士事務所において、所有権移転登記手続に必要な書類と引き換えに黒田弘之から額面金額五六九五万六〇〇〇円の小切手を受領し、株式会社サガミ名義の領収証(乙第三〇号証の四)を交付した。

原告は、右同日、株式会社サガミ宛の額面金額五六九五万六〇〇〇円の領収証を作成し(甲第二四号証)、また、佐々木商会に対し、本件第二物件の土地残代金五七三九万〇九〇〇円を支払った(甲第七一号証)が、その資金は黒田弘之から受領した五六九五万六〇〇〇円のうちの五六〇〇万円と原告手持の現金一三九万〇九〇〇円(甲第七二号証)から支払った。

三和ホームは、山西工務店から本件第二物件の仲介料として三〇〇万円(売買契約時に一五〇万円、残金支払時に一五〇万円)を受領し、荒川芳三、神田信夫、沖中浩に右仲介料を分配した。

(3) 原告の経理状況

原告は、山西工務店から手付金として受領した額面金額一〇〇〇万円の小切手三通を、昭和五三年一二月二九日に川崎信用金庫住吉支店の原告名義の当座預金に一〇〇〇万円(甲第六二号証)、同日大和銀行川崎支店の原告名義の当座預金に一〇〇〇万円(甲第六四号証)、同月三〇日三菱銀行元住吉支店の原告名義の通知預金に一〇〇〇万円 (甲第六六号証)をぞれぞれ入金した。そして、原告は、原告の川崎信用金庫の当座預金元帳の昭和五三年一二月二七日欄に「妙蓮寺土地契約金」と記載して預入金額欄に一〇〇〇万円と記入し(甲第六三号証)、大和銀行の当座金元帳の同日欄に「妙蓮寺土地代金」と記載して預入金額欄に一〇〇〇万円と記入し(甲第六五号証)、また、原告の通知預金元帳の同月二八日欄に「土地売上三菱、サガミ、妙蓮寺売上分預入」と記載して借方欄に一〇〇〇万円と記入した(甲第六七号証)。

原告は、浅井輝雄に仲介手数料二六〇万円を小切手二通で支払っていたため、原告の三菱銀行当座預金元帳の昭和五四年六月二〇日欄に「支払仲介料浅井商会、篠原西町118仲介料」と記載したうえ、引出金額欄に一六〇万円、一〇〇万円と記入した(甲第七四号証)。

原告は、昭和五四年一〇月三〇日に受領した本件第二物件の売買残代金五六九五万六〇〇〇円のうち五六〇〇万円を佐々木商会に対する売買残代金の支払いに当てたため、残金九五万六〇〇〇円を三菱銀行元住吉支店の原告名義の当座預金に入金し(甲第六九号証)、原告の三菱銀行の当座預金元帳の昭和五四年一〇月三一日欄に「土地売上(株)サガミ」と記載し、その預入金額欄に九五万六〇〇〇円と記帳した(甲第七〇号証)。

以上の認定に反する証拠は次に判示するとおり信用できない。

(1) 原告代表者鈴木操の供述中には、原告の代表取締役鈴木操は、本件第二物件の売買契約及び中間金の授受に立ち会っておらず、同物件を株式会社サガミに売却したとの報告を受けているだけである旨供述する部分があり、また、証人荒川芳三の証言中にも同旨の部分があるが、右各供述は、前顕乙第七号証(荒川芳三の聴取書)、第八号証 (田中孝一郎の聴取書)、第一八号証の一(黒田弘之の聴取書)に照らして信用できないばかりでなく、右認定のとおり、共信不動産の黒田弘之は、株式会社サガミや荒川芳三を信用できず、そのため原告の代表取締役鈴木操に対し、原告が売買契約の責任をもつことをわざわざ確認したうえで、株式会社サガミを売主とする売買契約書の作成に応じ、かつ、手付金を支払ったのであり、そのうえ、原告が山西工務店との間において昭和五四年六月二〇日に中間金を今後請求しないこと等を約して合意書(乙第一八号証の三)を作成したり、残代金の支払時期等を取り決めてその旨の覚書(乙第一八号証の四)を作成していることからして、右原告の代表取締役が山西工務店との売買契約及び中間金の支払いに立ち会っていないとは考え難く、右各供述は到底信用できない。

(2) 証人浅井輝雄及び同荒川芳三の各供述中には、原告が佐々木商会から本件第二物件を購入した際、原告が総額一五一九万円(坪当たり七万円)の裏金を同社に支払うことを約しており、昭和五四年六月中旬、山西工務店が原告事務所に売買代金の中間金として一五一九万円を持参したので、これを佐々木商会の代表取締役佐々木理一郎の娘に渡して、裏金の支払いを行った旨供述する部分があり、また、原告代表者鈴木操尋問の結果中にも同旨の供述部分があり、さらに、甲第二八号証(浅井輝雄の上申書)、第二九号証(荒川芳三の上申書)き記載中にも同旨の記載部分がある。

しかし、右各供述部分及び記載部分は、いずれも成立に争いのない乙第一九、二〇号証(山崎洋子、三古谷明子の聴取書)及び証人佐々木理一郎の証言に照して信用できないばかりでなく、前顕乙第七号証によれば、荒川芳三は大蔵事務官に対し、山西工務店が原告に本件第二物件の売買代金の中間金を支払った際に立ち会っていない旨供述していることが認められるのであって、荒川芳三の右供述及び甲第二九号証の右記載部分はその点からしても信用できない。

また、右認定のとおり、黒田弘之は原告に対し、山西工務店の売買代金の中間金として、昭和五四年四月一〇日に五〇〇万円、同年六月二〇日に一〇一九万円を支払っている(乙第一八号証の二、三)のであって、山西工務店が原告事務所に一五一九万円を中間金として一括して持参したと認めるに足る証拠はなく、右各供述及び記載部分はその点からして信用できない。

さらに、荒川芳三及び浅井輝雄の各供述中には、同人らは、佐々木理一郎の娘が原告事務所に裏金を取りに来た際、席を外して別室にいたために裏金を持ち帰るのを目撃していない旨供述する部分があるが、荒川芳三及び浅井輝雄が席を外す理由は全くなく、むしろ、同人らは責任をもって裏金の支払いを確認する必要があったと考えられるのであり、その点からしても同人らの右各供述及び甲第二八、二九号証の記載部分には不合理な内容であって信用できない。

その他右認定を覆すに足る証拠はない。

(二)  右認定事実を前提にして、原告が、本件第二物件の取引により取得した譲渡益について判断する。

原告は、昭和五三年一二月二八日株式会社サガミに本件第二物件を八六九万六〇〇〇円で売り渡す旨の土地売買契約書を作成し、他方、株式会社サガミは、右同日、山西工務店に対し、本件第二物件を一億〇二一七万三三〇〇円で売り渡す旨の土地売買契約書を作成している。

しかし、<1>株式会社サガミが本件第二物件の取引において契約書上取引当事者となったのは、原告が裏金を要求したものの、山西工務店が裏金の支払いに応じないため、仲介業者である荒川芳三が代表取締役である休眠会社を介在させ、契約書上において裏金分を同会社の譲渡益として捻出しこれを裏金に当てようとしたためであること、<2>株式会社サガミが山西工務店に本件第二物件を売り渡す旨の土地売買契約書は、原告事務所において原告の代表取締役鈴木操の面前で作成されているうえ、その際、右原告の代表取締役が黒田弘之に対し、形式上売主を株式会社サガミとするのであって実質的な売主は原告であり、原告が売買契約上の責任を負う旨確約していること、<3>売買代金の手付金は、黒田弘之の面前において、黒田弘之から荒川芳三に、同人から右原告の代表取締役に渡されていること、<4>黒田弘之は、原告事務所において、右原告の代表取締役に対し売買代金の中間金を支払っていること、<5>原告は山西工務店に対し、昭和五四年六月二〇日、本件第二物件の売買代金について今後中間金の請求をしないことなどを約し、また、同年一〇月一二日残代金の支払期日を決める等していることからすれば、原告が山西工務店に対し、本件第二物件を一億〇二一七万三三〇〇円で売り渡したというべきであり、株式会社サガミは、原告が裏金を要求し、山西工務店が裏金の支払いに応じないため、原告に対する裏金を捻出させるために形式上介在させたに過ぎないものと認めるを相当とする。

そして、原告は、山西工務店に対し、本件第二物件を一億〇二一七万三三〇〇円で売り渡した後、同物件を実測して売買代金を一億〇二一四万六〇〇〇円に減額し、また、山西工務店の資金援助者である共信不動産から売買契約時に三〇〇〇万円、昭和五四年四月一〇日に五〇〇万円、同年六月二〇日に一〇一九万円、同年一〇月三〇日に五六九五万六〇〇〇円を受領している。

そうすると、原告主張の売却価格八六九五万六〇〇〇円よりも一五一九万円も高額の売却価格で譲渡しているのであるから、一五一九万円の譲渡益が計上漏れであるというべきである。

なお、前顕甲第四四号証、証人浅井輝雄、同佐々木理一郎の各証言、原告代表者鈴木操尋問の結果によれば、佐々木商会は、以前から不動産取引において売買契約書に記載した売買価格以外に裏金を要求していたこと、佐々木商会は、原告に本件第二物件及び訴外物件を売却した際にも裏金を要求し、原告が三晃住建に手付金のほかに現金一〇〇〇万円を用意させて昭和五三年三月七日に佐々木商会に支払ったことが認められる。

しかし、原告が佐々木商会に対し、右以外に裏金を支払ったと認めるに足る証拠はなく(証人佐々木理一郎の供述中には、佐々木商会が原告から本件第二物件及び訴外物件に関して裏金として二〇〇〇万円以上を受け取った旨供述する部分があるが、右供述は、本件第二物件のみならず訴外物件も含めて裏金の授受についてのものであるうえ、裏金の金額、授受の回数等に関して曖昧であって信用できない。)、また、裏金の金額を確定するに足る証拠もなく(なお、原告代表者鈴木操、証人荒川芳三及び同浅井輝雄は、原告が佐々木商会に一五一九万円の裏金を支払った旨供述しているが、これが信用できないことは前説示のとおりである。)、原告が佐々木商会に対し、本件第二物件に関して、契約書記載の代金額六七三万〇九〇〇円以外に支払ったと認めることはできない。

もっとも、原告は、経理処理上、本件第二物件を株式会社サガミに売り渡したことを前提として、手付金の三〇〇〇万円と残代金の五六九五万六〇〇〇円しか帳簿に記帳していないが、右事実をもって、原告が中間金の一五一九万円を受領していないとはいえず、むしろ、原告が山西工務店に要求して現金で中間金を持参させたことからして、原告は株式会社サガミを取引に介在させて中間金の一五一九万円についての課税を免れようとし、その一環として右のような経理処理をしたと推認される。

(三)  以上のとおりであって、原告は、本件第二物件の取引に関して、千五百十九万円の譲渡益を計上漏れにして納税申告したことになる。

3  本件第三物件について考察する。

(一)  成立に争いのない甲第二六号証の一(但し、南海総業作成部分を除く。)、乙第一〇号証、第一二ないし第一五号証、第一七号証、第二八号証、証人浜頭菊雄の証言により真正に成立したと認められる乙第二四(原本の存在も認められる) 二五号証、右乙第一二号証により真正に成立したと認められる乙第一一号証(但し、南海総業作成部分を除く。)、弁論の全趣旨により真正に成立(写しについては原本の存在と成立)したものと認められる甲第二六号証の二ないし四、第二七号証の一、二、第七五ないし、第八〇号証、第八一号証の一、二、第八二ないし第八六号証、証人荒川芳三(但し、後記の措信できない部分を除く。)、同浅井輝雄(但し、後記の措信できない部分を除く。)、同浜頭菊雄の各証言、原告代表者鈴木操尋問の結果(但し、後記の措信できない部分を除く。)によれば、次の事実が認められる。

(1) 本件第三物件の購入状況

原告は、昭和五四年一月一九日、株式会社ホウシンハイムから本件第三物件を一九五〇万円で買い受け(甲第七五号証)、同日手付金二五五万円(甲第七六号証)を、同年三月五日に残金一六九五万円(甲第七九号証)をそれぞれ支払って、同月六日に同月五日売買を原因として所有権移転登記手続を了した(乙第一七号証)。

(2) 本件第三物件の転売状況

原告は、本件第三物件を転売しようとして不動産業者等に売却依頼していたところ、株式会社善勝との間で、同社の従業員である内藤政和が同物件を購入して建売住宅を建築したうえ、株式会社善勝がこれを販売する旨の話が持ち上がり、昭和五四年三月一九日、内藤政和が本件第三物件を三九〇〇万円で購入することになった。

原告の代表取締役鈴木操は、昭和五四年三月一九日、原告事務所において株式会社善勝の代表者苫米地勝吉、同社の従業員伊東昭及び浅井輝雄と話し合って、原告が内藤政和に本件第三物件を三九〇〇万円で売却することを決めた その際、右原告の代表取締役は苫米地勝吉に対し、南海総業を介在させて取引することを依頼し、また、同人に対し、原告が南海総業に本件第三物件を三〇〇〇万円で売り渡し、右代金を契約時に手付金として一五〇〇万円、昭和五四年年三月末までに九〇〇万円、所有権移転登記を行ったうえ同年六月一〇日までに残金六〇〇万円を支払う内容の土地売買契約書(甲第二六号証の一)の作成を依頼し、苫米地勝吉が右内容の土地売買契約書を作成すると、浅井輝雄が右契約書の買主欄に「横浜市中区末吉町一丁目九番地南海総業株式会社代表取締役根岸重三」と表示された偽造のゴム印及び社印を押捺した。

なお、南海総業は、昭和四六年八月二五日に不動産売買仲介業を目的として神奈川県横須賀市若松町三-一六に設立された株式会社であるが、同社の代表者根岸重三が昭和五〇年一二月ころ脳血栓で倒れてから休業状態となり、根岸重三は、昭和五二年春ころから荒川芳三の経営する株式会社サガミに宅地建物取引主任者として一〇日程勤務していたところ、荒川芳三が南海総業の本店所在地を株式会社サガミの本店と同じ横浜市中区末吉町一-九に移した。

ところで、南海総業の社印は、右本店を移転した後、横浜市中区末吉町1ノ9南海総業株式会社代表取締役根岸重三」又は「横浜市中区末吉町一ノ九南海総業株式会社代表取締役根岸重三」というゴム印を使用していた(乙第一三号証)。

内藤政和は、昭和五四年三月三〇日、株式会社善勝の事務所において、南海総業が内藤政和に本件第三物件を三九〇〇万円で売り渡し、同日手付金三三〇〇万円を受領するのと引き換えに所有権移転登記手続を行い、同年六月一〇日までに残金六〇〇万円の支払いを受ける内容の土地売買契約書(乙第一一号証)を作成し、同日、川崎信用金庫新城支店から四九五九万三〇五七円を借り受け、同日四六〇〇万円を引き出し(乙第二四号証)、その内の三三〇〇万円を手付金として原告に支払って(乙第一二号証、なお、三三〇〇万円のうち九〇〇万円は小切手で川崎信用金庫住吉支店の原告名義の当座預金口座に入金されている。《甲第八二、第八三号証、乙第二五号証》)、所有権移転登記手続を受けた(乙第一七号証)。

内藤政和は、昭和五四年五月一四日、川崎信用金庫新城支店の通知預金七五一万〇八六三円のうち六五〇万円の払戻しを受け、原告事務所において、原告の代表取締役鈴木操に本件第三物件の残代金六〇〇万円を現金で支払った(乙第一二号証、第二四号証)。

(3) 原告の経理状況

原告は、昭和五四年三月一九日、三菱銀行元住吉支店の原告名義の当座預金に一五〇〇万円を入金し(甲第八〇号証)、原告の三菱銀行の当座預金元帳の同日欄に「井田199・35m2手附金」と記載したうえ、預入金額欄に一五〇〇万円と記入した(甲第八一号証の二)。

また、原告は、昭和五四年三月三〇日、川崎信用金庫新城支店振出の額面金額九〇〇万円の小切手(内藤政和から受領した本件第三物件の手付金の一部)を川崎信用金庫住吉支店の原告名義の当座預金に入金し(甲第八二、第八三号証、乙第二五号証)、原告の川崎信用金庫の当座預金元帳の昭和五四年三月三一日欄に「井田中間金」と記載して預入金額欄に九〇〇万円と記入した(甲第八四号証)。

原告は、昭和五四年五月一五日、農業協同組合の当座貯金に六〇〇万円を入金し(甲第八五号証)、原告の農業協同組合の当座貯金元帳の同月一四日欄に「井田残金入金」と記載し、預入金額欄に六〇〇万円と記入した(甲第八六号証)。

以上の認定に反する証拠は次に説示するとおり信用できない。

すなわち、原告代表者鈴木操の供述中には、原告は、本件第三物件を三〇〇〇万円で転売しようと不動産業者に依頼していたところ、浅井輝雄が購入を希望してきたので一旦は売却を承諾したものの、後に株式会社善勝が三八〇〇万円ないし三九〇〇万円で購入すると申し出たので同社に転売しようとしたが、浅井輝雄が原告に約束違反であると抗議したので、浅井輝雄に三〇〇〇万円で本件第三物件を売却し、浅井輝雄から株式会社善勝に転売させることにしたところ、浅井輝雄は、売買契約の際に南海総業を介在させた旨供述する部分があり、また、甲第三〇号証(浅井輝雄の上申書)の記載中及び証人浅井輝雄の供述中には、右同旨の記載及び供述部分があるうえ、荒川芳三を通じて吉岡清から休業中の南海総業の社印を入手し、同社を原告からの買主、内藤政和に対する売主として契約書を作成し、昭和五四年三月一九日に九〇〇万円を取得して吉岡清に渡したところ、浅井輝雄と荒川芳三の分前として一五〇万円しかよこさなかった旨の記載及び供述部分があり、さらに甲第三一号証(荒川芳三の上申書)の記載中及び証人荒川芳三の供述中にも、同旨の記載及び供述部分がある。

しかし、右各供述及び記載部分は前顕乙第一〇号証(苫米地勝吉の聴取書)に照らして信用できないばかりでなく前記2(一)において認定のとおり、浅井輝雄は不動産仲介業者であって、原告代表者鈴木操尋問の結果によっても、原告が浅井輝雄又は同人経営の浅井商会との間で昭和五四年三月一九日以前に不動産売買の取引を行ったことがないことが認められ、しかも、浅井輝雄が本件第三物件を必要としたり、他に転売先を見つけていたと認めるに足る証拠はないことからして、原告が浅井輝雄に本件第三物件を売却しようとしたとは考え難い。

のみならず、右認定のとおり、内藤政和は、昭和五四年三月三〇日に本件第三物件を購入する売買契約を締結し、右同日手付金三三〇〇万円を支払ったのであるから、仮に浅井輝雄が昭和五四年三月一九日に原告から本件第三物件を買い受け、手付金一五〇〇万円を支払ったのであれば、浅井輝雄は一五〇〇万円もの資金を準備しなければならないが、同人にこれを捻出する資力があったと認めるに足る証拠はないうえ、浅井輝雄は、右同日九〇〇万円を吉岡清方に持参して、同人及び荒川芳三と分配したというのである(甲第三〇号証参照)から、合計二四〇〇万円の資金を準備しなければならないことになり、しかも、転売先からの入金が全くない時点において、吉岡清や荒川芳三に譲渡益を分配したとすることも著しく不自然、不合理であって、前記2(一)において認定のとおり浅井輝雄は本件第二物件の売買に関しても架空の売買契約書の作成に加担している事実に照らしても、甲第三〇、三一号証の右記載部分及び証人浅井輝雄、荒川芳三の右各供述部分は信用できない。

もっとも、右認定のとおり、原告は、昭和五四年三月一九日に三菱銀行元住吉支店の原告名義の当座預金に一五〇〇万円を入金しており、右金額は、原告と南海総業との土地売買契約書(甲第二六号証の一)に記載された手付金額と一致するのであるが、右判示のとおり、浅井輝雄または南海総業が原告に手付金一五〇〇万円を支払う資力があったとは認められず、右一五〇〇万円の入金が本件第三物件の手付金であると裏付ける証拠もないのであって、右事実をもって、原告が浅井輝雄に本件第三物件を売却したと認めることはできない。

(二)  右認定事実を前提にして、原告が本件第三物件の取引により取得した譲渡益について判断する。

原告は、南海総業に本件第三物件を三〇〇〇万円で売り渡す旨の土地売買契約書(甲第二六号証の一)を作成し、また、南海総業が内藤政和に同物件を三九〇〇万円で売り渡す旨の土地売買契約書(乙第一一号証)が作成されているが、<1>原告の代表取締役鈴木操が昭和五四年三月一九日に内藤政和の勤務する株式会社善勝の代表取締役苫米地勝吉と話しあって、内藤政和に本件第三物件を売却することを決めていること、<2>内藤政和の支払った手付金三三〇〇万円が原告に入金されていること、<3>原告が右同日内藤政和に本件第三物件につき所有権移転登記手続を行っていること、<4>内藤政和が同年五月一四日右原告の代表取締役に残代金六〇〇万円を支払っていること、<5>本件第三物件売買の当時南海総業は休業中であり、土地売買契約書(甲第二六号証の一)に押捺された南海総業の社印、ゴム印も偽造にかかるものであることからすると、南海総業は右売買に形式的に介在したもので、真実は原告が内藤政和に対し、昭和五四年三月三〇日、本件第三物件を三九〇〇万円で売り渡したと認めるを相当とする。

そうすると、原告は、本件第三物件を原告主張の売買価格三〇〇〇万円より九〇〇万円高額な売買価格で売り渡したのであるから、右九〇〇万円の譲渡益が計上漏れとなっている。

したがって、原告は、本件第三物件の取引に関して九〇〇万円の譲渡益を計上漏れにして納税申告したことになる。

三  本件更正処分の違法性について判断する。

1  原告の本件事業年度における所得金額について考察する。

(一)  申告所得金額

原告が本件事業年度の所得を二五五七万六九〇七円と申告したこと(被告の主張1(一))は当事者間に争いがない。

(二)  譲渡益の計上漏れ金額

前記二のとおり、原告は、本件事業年度において、本件第一物件の取引により、七六三万二五〇〇円の譲渡益を得ながらこれを申告せず、また、本件第二物件の取引において、売却価格を一五一九万円減額して申告し同額の譲渡益を計上漏れとしており、さらに、本件第三物件の取引において、売却価格を九〇〇万円減額して申告し同額の譲渡益を計上漏れとしているから、申告所得金額に合計三一八二万二五〇〇円を加算することになる。

(三)  寄附金の損金不算入額

原告が資本金一〇〇〇万円の株式会社であること、原告が本件事業年度において寄附金として三六〇万円を支出していること(被告の主張1(三))は当事者間に争いがなく、原本と成立に争いのない乙第三二号証の一によれば、原告が本件事業年度における寄付金支出前所得金額を二四五五万九三三八円と申告したことが認められ、右事実によれば、原告の本件事業年度における寄付金の損金算入額は、法人税法三七条二項、同法施行令(昭和五九年三月政令第五七号による改正前のもの)七三条により三一万九四九一円となる(別紙寄付金の損金不算入額の計算表(2)参照)。ところで、原告には、右のとおり所得の計上漏れがあるから、これを加算して寄付金支出前の所得を算定すると五六三八万一八三八円(寄付金支出前所得金額二四五五万九三三八円に計上漏れの三一八二万二五〇〇円を加算した。)となり、右金額を前提に寄付金の損金算入額を算定すると七一万七二七二円となる(別紙寄付金の損金不算入額の計算表(2)参照)。

そうすると、原告は、本件第一ないし第三物件の取引による譲渡益を計上しなかったことにより寄付金の損金算入額を三九万七七八一円過少に申告したことになるから、右金額を所得金額から控除する必要がある。

(四)  以上により、原告の本件事業年度における所得金額は申告所得金額二五五七万六九〇七円に本件第一ないし第三物件の取引による計上漏れ譲渡益三一八二万二五〇〇円を加算し、さらに、寄付金の損金不算入金額の増加分三九万七七八一円を控除した五七〇〇万一六二六円が所得金額となる。

2  本件第一ないし第三物件の取引に措置法六三条一項の適用があるから、原告の本件事業年度における課税土地譲渡益金額について考察する。

(一)  土地譲渡収益額

原告が本件事業年度において一一億九八七一万四四〇〇円の土地譲渡収益があったと申告していること(被告の主張2(二)(1))は当事者間に争いがない。

そして、前記二判示のとおり、原告は、本件第一物件の売却価格六三九三万六〇〇〇円を土地譲渡収益額から控除しており、また、本件第二物件の売却価格から一五一九万円を控除した八六九五万六〇〇〇円しか土地譲渡収益額としておらず、さらに、本件第三物件の売却価格から九〇〇万円を控除した三〇〇〇万円しか土地譲渡収益額としていないから、右合計八八一二万六〇〇〇円を原告の申告した土地譲渡収益額に加算することになる。

したがって、原告の本件事業年度における土地譲渡収益額は一二億八六八四万〇四〇〇円となる。

(二)  土地譲渡収益に対応する原価の額

原告が本件事業年度において土地譲渡収益に対応する原告を一〇億三五一一万二九四〇円と申告していること(被告の主張2(二)(2))は当事者間に争いがない。

前記二1において認定のとおり、原告は、堀田正義外五名から本件第一物件を五一八〇万三五〇〇円で購入し、右仲介手数料として古河産業及び泰栄商事に合計三一二万円を支払ったから、合計五四九二万三五〇〇円を原告の右申告にかかる原価の金額に加算することになる。

したがって、原告の本件事業年度における土地譲渡収益に対応する原価の金額は一〇億九〇〇三万四四〇円となる。

(三)  土地譲渡経費

(1) 負債利子の額

原告が本件事業年度における負債利子の額を四二九八万九五〇一円と申告していること(被告の主張2(二)(3)<1>)は当事者間に争いがない。

前顕乙第三二号証の一によれば、原告が本件事業年度の納税申告を行う際昭和五七年三月政令第五七年三月政令第七二号による改正前の租税特別措置法施行令三八条の四に規定する概算法によって負債利子の計算を行っていることが認められるからこの方法により本件第一物件の負債利子金額を算定するに、原告は、本件第三物件を昭和五四年八月二二日に購入して同年九月三日に転売しているから、同物件の購入費及び仲介手数料の合計金額五四九二万三五〇〇円に対する一月間(右施行令三八条の四第七項)の利子二七万四六一七円(年利六パーセント、右施行令三八条の四第六項一号)を原告の申告した負債利子額に加算することになる。

したがって、原告の本件事業年度における負債利子は四三二六万四一一八円となる。

(2) 販売費等の額

ア 原告が本件事業年度における販売費等の額を八〇一二万二四〇二円と申告したこと(被告の主張2(二)(3)<2>)は当事者間に争いがない。

イ 前記二1(一)認定のとおり、原告は、本件第一物件を中野商事に売却するために泰栄商事に仲介料一三八万円を支払ったから、これを販売費に加算することになる。

ウ 原告の本件事業年度における間接費のうち、譲渡土地に係る間接費を間接配賦法(措置法施行令三八条の四第八項)により算定する。

原告の本件事業年度中に保有した土地及び建物に係る間接費が八〇七〇万八三八〇円であること、原告が本件事業年度の土地及び建物の完成工事原価を一九億〇六九四万〇九九四円と申告していたこと(被告の主張2(二)(3)<2>)は当事者間に争いがない。ところで、原告の申告にかかる土地及び建物の完成工事原価金額は、本件第一物件の購入価格五一八〇万三五〇〇円及び購入の仲介手数料三一二万円が除外されているから、これを加算した一九億六一八六万四四九四円が本件事業年度の土地及び建物の完成原価となる。そこで、原告の本件事業年度年度の間接費八八〇七〇万八三八〇円を右完成工事原価額一九億六一八六万四四九四円で除して間接配賦率を算出すると〇・〇四一となる。

そして、原告が別表間接配賦額の計算表のうち「被告配賦額計算」欄および「差額」欄を除いたとおり申告していたこと(但し、中野商事に関する部分を除く。被告の主張2(二)(3))は当事者に争いがなく、また、右説示のとおり、本件第一物件の購入価格及び購入の仲介手数料が合計五四九二万三五〇〇円であるから、原告の本件事業年度中に売却した土地の原価金額は別表間接配賦額の計算表の「土地原価」欄記載のとおりとなる。

別表間接配賦額の計算表の「土地原価A」欄記載の金額に間接配賦率〇・〇四一を乗じて間接配賦額を算定すると、同表「被告配賦計算C」欄記載のとおり、合計四四六九万一四八四円となる。

そこで、実際の間接配賦額四四六九万一四八四円から原告の申告に係る間接配賦額四三四七万四七三四円を控除した一二一万六七五〇円が申告漏れの間接配賦額となる。

エ 以上により、原告の本件事業年度における販売費等の金額は、原告申告の販売費等の金額に本件第一物件の売却の際の仲介手数料一三八万円及び計上漏れの間接配賦額一二一万六七五〇円を加算した八二七一万九一五二円となる。

(四)  そこで、課税土地譲渡金額を算定すると、譲渡収益額一二億八六八四万〇四〇〇円からこれに対応する原価の額一〇億九〇〇三万六四四〇円、負債利子の額四三二六万四一一八円及び販売費等の額八二七一万九一五二円を控除した七〇八二万〇六九〇円が課税土地譲渡金額となる。

3  本件更正処分(審査裁決による減額後のもの、以下同じ。)は、所得金額を五七〇〇万一六二六円、課税土地譲渡利益金額を七〇八二万円としている(別表本件課税処分の経緯参照)ところ、右判示のとおり、原告の本件事業年度における所得金額は五七〇〇万一六二六円、課税土地譲渡利益金額は七〇八二万〇六九〇円であるから、本件更正処分には、原告の所得を過大に認定した違法はない。

四  本件賦課決定について判断する。

前記二1において認定したとおり、原告は、堀田正義外五名から本件第一物件を買い受け、中野商事に転売して七六三万二五〇〇円の譲渡益を取得しながら、右譲渡益が三晃住建に帰属したかのように仮装するため、堀田正義外五名との売買契約の買主欄に三晃住建の名前を記載した紙片を貼付し、また、原告と中野商事との売買契約書を作成しながら、これを回収して三晃住建を売主とする売買契約書に差し替え、さらに、これに応じた経理処理を行って、本件第一物件の取引によって取得した譲渡益に対する課税を免れようとした。

また、前記二2において認定したとおり、原告は、本件第二物件を山西工務店に売却しながら、株式会社サガミに右売買価格よりも定額で売却したように装って譲渡益の一部について課税を免れようと企て、仮装の売買契約書を作成したうえこれに対応する会計処理を行い、譲渡益のうち一五一九万円を取得しなかったように工作して、同譲渡益に対する課税を免れようとした。

さらに、前記二3において認定のとおり、原告は、本件第三物件を内藤政和に売却しながら、南海総業に右売買価格よりも低額で売却したように装って譲渡益の一部について課税を免れようと企て、仮装の売買契約書を作成したうえこれに対応する会計処理を行い、譲渡益のうち九〇〇万円を取得しなかったように工作し、同譲渡益に対する課税を免れようとした。 以上の原告の各行為は、法人税の課税標準等又は税額の計算基礎となるべき事実を隠蔽しまたは仮装したものであるから、国税通則法六八条一項により、計上漏れとなった譲渡益全額について重加算税の賦課決定をすべきである。

したがって、本件賦課決定には原告主張の違法はない。

五  よって、原告の本訴請求は、理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行訴法七条、民訴法八九条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡邊昭 裁判官 宮岡章 裁判官 西田育代司)

別表

本件課税処分の経緯

<省略>

別表

間接配賦額の計算表

<省略>

別紙

寄付金の損金不算入額の計算表

<省略>

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